2010年08月23日

手付金の性質と契約戦略

 売買契約などにおいては、しばしば、手付金が支払われます。

 こうした手付金は、法律上は「金」を付けずに、「手付」と言われます。

 ところで、手付には、契約が成立した証拠になるという面が常にあります。

 その意味での手付を証約手付といいます。

 そして、手付は、それ以外の面で見ると、3種類に分けられます。

 一つめは、解約手付です。

 これは、買主の側で手付を放棄するか、売主の側で手付の倍額を支払えば、契約を解除できるというものです。

 この意味での手付は、契約を途中でやめるかどうかの選択権を残しておきたい場合に使われます。

 二つめは、損害賠償の予定としての手付です。

 これは、買主に債務不履行があった場合には、売主が手付金を損害賠償として受け取り、売主に債務不履行があった場合には、売主が手付金を返すとともにさらに同額を損害賠償として支払うというものです。

 実損害額の如何に関わらず、手付金の額が賠償額ということになり、実損害額の証明が不要になります。

 また、手付の額が、実損害額より高くても低くても、損害賠償の額は変わらないと言うことになります。

 三つめは、違約罰としての手付です。

 これは、債務不履行があった場合に、本来の損害賠償とは別に没収するというものです。

 債務不履行があれば、通常の損害賠償プラス手付が取れるので、契約の拘束力が強くなります。

 さて、ここで問題になるのが、当事者の間で上記三つのどれとは明確にせずに手付を授受した場合に、どれになるかです。

 これについては、法律上、解約手付と推定されています(民法557条1項)。

 すなわち、特に解約手付ではないという合意があったことを立証しない限りは、解約手付とされます。

 したがって、特にどれとは明確にしていなかった場合、特に解約手付でないとの合意があったことを立証できるような場合でなければ、買主としても売主としても、手付の額の損失を覚悟すれば、契約をなかったことにできるわけです。

 例えば、買主としては、もっと安く買えるところが見つかった場合ややっぱり買いたくなくなった場合、売主としては、もっと高く売れるところが見つかった場合ややっぱり売りたくなくなった場合、手付分の損だけで、契約をなかったことにできるわけです。

 逆に言えば、この契約は絶対に覆したくないという場合には、何も決めずに、手付を授受することは、非常に危険です。

 実際、例えば、「土地の売買契約を結んで、ちゃんと手付金として500万払ったのに、後日、1000万円を返されて、なかったことにされました。この建物で商売をすれば、何億もの利益が出るはずだったのに、大損害です。なんとかなりませんか?」というような話を聞いたりしますが、手付を授受するということは、解約の自由を留保したということになるので、原則として、損害賠償を請求したりはできません。

 なお、判例上、損害賠償の予定として手付と解約手付は両立するとされ、損害賠償の予定として手付が授受された場合でも、解約手付としての性質を持つとされます。

 損害賠償の予定としての手付としておけば、それだけで解約手付でなくなるわけではなく、積極的に、解約手付でないと明確化しておかなければならないわけです。

 このように、手付は、その性質を明確化しておかないと、契約の拘束力を弱めるという面があります。

 最終段階まで選択肢を残しておきたいというときには、この面を利用するのが得策です。

 一方で、この契約は絶対に覆したくないという場合には、手付を授受しないとか、手付でなくて内金にするとか、解約手付でないことを明確にするとかしておくことが大事になります。





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2010年08月20日

違約金と損害賠償の予定

 契約書には、しばしば、違約金の条項を入れることがあると思います。

 例えば、「甲が、故意又は過失により、本契約上の義務に違反したときは、乙に対して、違約金として金500万円を支払う。」というようなものです。

 相手方が契約違反をした場合でも、具体的な損害額の立証がなかなか難しいことがあります。

 損害の立証ができなければ、いくら相手に故意過失による契約違反があっても、損害賠償請求が認められません。

 こうした場合に、違約金の定めをおいておけば、具体的な損害額を立証せずに、相手方に違約金を請求することができます。

 ただし、気をつけなければならないのは、民法上、違約金は、損害賠償の予定と推定されていることです(民法420条3項)。

 損害賠償の予定とは、予め賠償額を固定させてしまううもので、実際の損害がこれより低くても高くても変更ができません。

 したがって、上記の条項のケースで、損害賠償の予定と推定されれば、仮に実際の損害額が1000万円だったとしても、請求できるのは500万円ということになります。

 これは、あくまで推定なのですが、債権者の方で、違約金は損害賠償と別個であるという趣旨であったとか、500万を超えた場合には別個請求できる趣旨だったなどといったことを立証しなければ、覆すことができません。

 ですので、違約金を定める場合、債権者としては、上記の条項に、例えば、「ただし、乙に前記金額を超える損害が発生している場合、その超過額を請求することを妨げない。」というような文言を加えておくべきでしょう。



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posted by 弁護士 吉成安友 at 19:13| Comment(0) | 契約書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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